長い歴史を誇るフランス伝統のソーセージを解説

フランス人が愛してやまないシャルキュトリ(食肉加工品)。パテやリエットなど、種類豊富なシャルキュトリの中から、今回は日本人にも身近な「ソーセージ」をピックアップします。伝統的な製法と高い品質を大切にするフランスのシャルキュトリの中でも、特にソーセージは歴史が長く、個性も豊か。フランスの多彩なソーセージを知れば、きっともっとフランス料理の楽しみ方が広がるはずです。

「シャルキュトリ規定書」によって受け継がれる伝統製法

フランスの食文化になくてはならない「シャルキュトリ(charcuterie)」。豚肉やジビエなどの食肉を使った「食肉加工品」とその販売店を意味します。手作り・大量生産に関わらず、「シャルキュトリ規定書」によって定義される伝統的な製法指針に則ってつくられたものがフランスのシャルキュトリとして認められています。地方によってもさまざまなレシピがあり、ワインのように豊かな地域性も魅力。中でもソーセージはひときわ歴史も古く、個性的なものがたくさんあります。

基本の基本、「ソーセージ」とは?

わたしたちが使っている「ソーセージ」という言葉は、英語の「ソーセージ(sausage)」から来ています。フランス語ではソーセージの大きいものを「ソシソン(saucisson)」、小さいものを「ソーシス(saucisse)」といいます。ちょっと語感が似ていますね。語源については諸説ありますが、ラテン語で「塩漬け」を意味する「salsas」という言葉にあると言われています。

ソーセージは、細かく刻んだ肉に、スパイス、つなぎとして卵や生クリームなどの副材料を加えて練り、ケーシング(腸や胃など動物の消化器官)に詰め、乾燥熟成、燻製、加熱などの加工を施したものの総称です。肉は、豚肉をメインに、牛、鶏、馬、羊、山羊のほか、内臓や血液、舌などの器官を使うものもあります。食材の乏しい痩せた土地だったヨーロッパにおいて、貴重なタンパク源を無駄にせず、ありとあらゆる部位を少しでもおいしく食べるための知恵が凝縮されてきたのがソーセージです。

長い歴史を誇るフランスのソーセージ

ヨーロッパ各地にさまざまなソーセージがありますが、フランスには2000年とも言われる長い歴史と根強い伝統があります。フランスがガリアと呼ばれていた時代、古代ローマ人が来たときには、すでに多種多様なソーセージが食べられていたといいます。

ソーセージはもともと動物のあらゆる部位を無駄なく使い切って保存するための加工技術です。裕福な人々が腸や内臓肉を珍重しなかったため農民の食べ物でしたが、徐々に“ごちそう”となっていきます。16世紀のフランスの医師ルドウィクス・ノニウスは、このように書きました。「現代において、豚肉はほかの肉より好まれている。脂肪、調味料とともに腸に詰めるソーセージは珍味とされている」。ソーセージがいつしか美食家向けのごちそうになったことに驚いた記述だそうです。

ソーセージに使われるスパイスやハーブには、香りや彩りだけではなく種類によって殺菌や防腐効果、消化促進の作用があります。地中海に面する南フランスやイタリアでは、ソーセージにニンニクやコショウ、タイムやフェンネルといったスパイスやハーブをブレンドして、繊細な香味に仕上げるのが特徴です。農民の食べ物から、ごちそうとしての地位を確立し、各地で進化してきた多彩な味わいを楽しめるソーセージ料理は、現在もビストロの定番。地域のワインとのマリアージュでさらに楽しみが広がります。

フランスのソーセージ代表的な4タイプ

フランスでは、大きさによってソーセージの呼び名が変わり、大きいものを「ソシソン(saucisson)」、小さいものを「ソーシス(saucisse)」と呼びます。製法別にフランスのソーセージのタイプ4つをご紹介します。

生タイプ

フランスで最も基本的なソーセージは、新鮮な豚肉や牛肉を使い、保存処理せず、つくりたての生のまま販売されています。そのため、食べる際には加熱調理が必要です。代表的なものに、フランス南西部の「ソーシス・ド・トゥールーズ(sausisse de Toulouse)」があります。カイエンヌペッパー、黒および白コショウ、ナツメグ、砂糖等が入ったほんのり甘口のソーセージで、腸詰めにしたあと、ねじって小分けにせず、長いまま渦巻き状に巻かれています。フランスを代表する郷土料理「カスレ」にも欠かせません。

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乾燥タイプ:ソシソン・セック(saucisson sec)/ソーシス・セッシュ(saucisse sèche)

「セック(sec)/セッシュ(sèche)」は「ドライな、乾燥した」という意味で、ドライソーセージの一種。腸詰めにした後、乾燥熟成させます。乾燥の度合いによって、硬い「ソシソン・セック(saucisson sec)」と、わりと柔らかい半生タイプの「ソシソン・ミセック(saucisson mi-sec)」に分けられます。水分の少ないソシソン・セックの方が、長期保存することができます。

表面を覆う「フルール(fleur)」(花の意味)と呼ばれる白い物質は、ペニシリウムという白カビの一種。カマンベールチーズの“皮”と同じ仲間です。乾燥熟成の工程で、この白カビが生み出す酵素や代謝産物の働きによって独特の風味、まろやかさ、香りが醸し出されます。

アルデッシュのドライソーセージ(saucisson sec de l’Ardèche) 、リヨンのロゼットおよびジェジュ(rosette et le jésus de Lyon )、ロコーヌのドライソーセージ(saucisson de Lacaune )などが有名です。

加熱済タイプ:ソシソン・キュイ(saucisson cuit)/ソーシス・キュイット(saucisse cuite)

加熱処理した原材料を使ったソーセージのこと。内臓や血液、皮などの副産物を加えて作る場合、それらの部位は雑菌が多く傷みやすいため、必ず完全に加熱して殺菌する必要があります。そのため加熱済のタイプには個性的な味わいが多いようです。

有名なものに、新鮮な豚の血液と、背脂などの脂肪を使う「ブーダン・ノワール(boudin noir)」があります。ブーダン・ノワールは最も古いソーセージの一つで、フランス各地にその地名を冠したさまざまなバリエーションがあります。クリスマスイブには「ブーダン・ブラン」(血液を使わない白いブタン)と一緒に夜食として供されるのが伝統です。

フランスではどこのビストロにもある定番人気の一品「アンデュイエット(andouillette)」もこのタイプにあたります。ソーセージの中身に主に豚の消化器、いわゆるモツの部分を使うソーセージで、似たものに「アンデュイユ(andouille)」があります。アンデュイユは大腸に詰めるため大きく、アンデュイエットは主に小腸に詰めるため小さいです。サイズ以外では、アンドゥイユはスモークされており、大きいためハムのように薄切りにして冷製オードブルとして食べるのに対し、アンドゥイエットはスモークされることはなく、グリルかボイルで温めてアツアツの状態で食べる、という違いがあります。

燻製タイプ:ソシソン・フュメ(saucisson fumé)/ソーシス・フュメ(saucisse fumée)

「フュメ(fumé/ fumée)」は「スモークした、燻製にした、いぶした」という意味。乾燥タイプのものも、ゆでたり蒸煮するなど加熱処理の前、あるいは加熱後にスモークをする場合もあります。有名なものに、スイス国境に接するフランシュ・コンテ地方の「ソーシス・ド・モルトー(Saucisse de Morteau)」があります。モツを使用し大腸に詰める「アンドゥイユ(Andouille)」も燻製が施されます。

いかがでしたか? 製法で大別したソーセージをご紹介してきましたが、豚肉以外の食肉や魚介を使ったソーセージなど、各地域にはさまざまな原材料を使ったこだわりの名物ソーセージが存在します。見慣れないフランスのソーセージに出会ったら、ぜひトライしてみてくださいね!

(参考)
「ソーセージの歴史」ゲイリー・アレン著、伊藤 綺訳(原書房)
「ハム&ソーセージ大全」(スタジオタッククリエイティブ)
「CHARCUTERIES.FR」www.lescharcuteries.fr/