フランス食文化の中心にある「シャルキュトリ」とは?

最近「シャルキュトリ」という言葉を目にするようになりました。でも、よく意味がわからないという方も多いのではないでしょうか? シャルキュトリは、古くから続くフランスの食文化で、ビストロや洋風居酒屋が増えてきた日本でも身近な存在になってきています。今回は多彩で奥深いシャルキュトリについてご紹介します。

古代から続く、フランスの食卓に欠かせないシャルキュトリ

「シャルキュトリ(charcuterie)」はフランス語で、主に豚の肉や内臓から作るハムやソーセージ、パテ、テリーヌ、リエットなどの食肉加工品の総称です。同時に、それらを販売するお店も指します。豚肉以外には、牛、羊、ジビエ(野性鳥獣の食肉)なども使われます。シャルキュトリは、「シェール(chair:肉)」+「キュイートゥ(cuite:加熱調理する)」が語源と言われていますが、現在は加熱していないタイプも多数あります。シャルキュトリを製造する職人は「シャルキュティエ※男性(charcutier)/シャルキュティエール※女性(charcutiere)」といい、古代ローマ時代から存在している最も古い職業の一つです。シャルキュトリは長い歴史を誇る伝統的なものなんですね!

そんなシャルキュトリは、フランス人の日々の食卓やアペロ(アペリティフ)のお供に欠かせません。どんな小さな街角やマルシェでも、シャルキュトリ(店)を見つけることができます。多くのシャルキュトリは切るだけ、あるいは焼くだけの簡単な調理で済み、手をかければ立派なメインディッシュにもなります。一般的に価格も手頃で、量り売りなども多く、缶詰・瓶詰も充実しているので、庶民の食卓の大きな味方として、フランス人の食生活になくてはならないものなのです。

450種類を超える豊かなバリエーションが魅力

食肉加工が盛んなヨーロッパ各国の中でも、フランスは加熱ハムの生産ではヨーロッパ第1位の国で、その生産量はヨーロッパ全体の約30%を占めるほど。フランスのシャルキュトリは、かつての保存食という概念が時代とともに薄れ、肉のおいしさを引き出し、洗練させることに注力した結果、450種類を超える多種多様なバリエーションを生み出すまでになりました。

お店では、食肉加工品と一緒に、マリネなどのお惣菜やフロマージュ(fromage:チーズ)、コンフィチュール(confiture:ジャム)などの付け合わせを取りそろえていることも多く、多彩なシャルキュトリをよりおいしく味わう“マリアージュ”の探求も楽しみの一つです。

それでは美食の国・フランスで長い歴史を誇り、百花繚乱となったシャルキュトリ文化の歴史を紐解いてみましょう。

痩せた土地ゆえ発展した畜産業と食肉文化

ヨーロッパ各地では、貴重なタンパク源である食肉の保存を目的として食肉加工技術が発達してきました。そもそもヨーロッパは乾燥して雨が少なく、植物が育ちにくい土地です。現在、農業大国として知られるフランスですが、今でも牧場や牧草地としてしか利用できない農地は多いそうです。本来は農業に適さず、しかし牧草地には恵まれた環境であるため、古くから畜産が行われており、食肉文化が発達していきました。

ヨーロッパでは紀元前2500年頃の新石器時代から豚が飼育されてきました。1回に1頭しか出産しない馬や羊と違い、多産なうえ早く育つ豚は、理想的な食用の家畜だったのです。そして湿度が低いヨーロッパは、肉の腐敗を防ぎ、乾燥熟成に適した気候風土により、食肉の保存性を高める加工に適した環境でもありました。

歴史の古いフランスのソーセージとハムづくり

古代ローマにはすでに食肉店があり、ハムやソーセージも販売されていました。食物史家のマグロンヌ・トゥーサン=サマはこのように述べています。「ソーセージづくりの伝統はローマとフランスで2000年間途絶えることなく生きつづけてきたといってよく、ソーセージそのものもほとんど同じものである」。また、フランスではガリアと呼ばれていた当時からハムづくりも盛んで、ローマにも輸出されており、「ゴール(※)のハム」は非常に有名だったそうです。
※ゴール(Gaule)=フランス語でガリアのこと

そして食肉加工技術の発展には、中世の十字軍の遠征や東方貿易が大きく影響を与えました。貿易で持ち込まれたものの一つが、「香辛料」。当時のスパイスは銀と同等の大変高価なものでしたが、スパイスの登場により、食肉の加工技術や味わいが進化。交易により、寒冷な痩せた土地でも収穫できる作物も導入されるようになりました。

百年戦争に遡るカスレの起源にアラブ料理からの影響も考えられるという説もあったように、東方の食文化の影響も受けたようです。保存性だけではなく、「食事を楽しむ」という文化の基礎がシャルキュトリの分野においても少しずつ出来上がっていったのです。

美食の国・フランスの食文化の中で、長い歴史と伝統を誇るシャルキュトリ。日本人にもなじみ深いハム、ソーセージにもさまざまなタイプがあり、また各地にもさまざまなシャルキュトリがあります。次回は、代表的なシャルキュトリをピックアップしてご紹介します。

(参考)
「ソーセージの歴史」ゲイリー・アレン著、伊藤 綺訳(原書房)
「ハム&ソーセージ大全」(スタジオタッククリエイティブ)
「CHARCUTERIES.FR」www.lescharcuteries.fr/